
ライト文芸は大人向けラノベ
ライト文芸って聞いたことはありますか?
キャラ文芸やキャラクターミステリーなどと呼ばれることもあります。
メディアワークス文庫を代表に、集英社オレンジ文庫、新潮文庫nex、富士見L文庫などの後発が登場して、ジャンルとして知られるようになりました。
これはライトノベル以上にはっきりと定義が定まっていないジャンルです。
でも、定義がないとうまく紹介できませんね。
ここではざっくり「大人向けライトノベル」と紹介させてください。
より詳しい特徴については後半で紹介します。
どうして大人向けライトノベルが登場するようになったのでしょうか?
それは、「ライトノベルの読者層が上の年齢層へ拡大しているから」です。
以前は「ライトノベルは中高の六年間だけ楽しむもので、高校の卒業とともにこっちも卒業するもの」というイメージが有りました。
しかし近年は大学生も、社会人も、ライトノベルを普通に読む人は珍しくありません。
そのような読者は自分が好きだった作家・シリーズを引き続き読みますが、
今の若者に人気の作品を読むかというとなかなか難しいこともあるようです。
これは当然です。年齢層によって共感できるキャラクターや説得力を感じるストーリーは違いますから。
そこで、大人の読者に向いた作品群が必要だ……ということで現れたのがライト文芸なのです。
ちなみに、ライト文芸はライトノベル読者の目から見れば「大人向けライトノベル」ですが、
一般文芸から見れば「ライトノベル読者向け一般文芸」ということになります。
ジャンル名からして間の子であることを意識しているのは明らかです。
最近は(別にライト文芸でなくとも)一般文芸の中にもライトノベル的雰囲気を持つ作品がずいぶん増えました。
視野を拡げるためにも、そんな作品を読んでみるのはおすすめですよ。

ライト文芸の特徴は?
メディアワークス文庫が電撃文庫から派生したジャンルと目されているように、
ライト文芸はライトノベルと似ているところが多いのですが、違いもいくつかあります。
以下、特徴をいくつか紹介します。
1)ライトノベルと同じように、キャラクターが重視される
(キャラ文芸などとも呼ばれるゆえんです)
2)イラストがついていることが多いが、タッチが違ったり、数が少なかったり
(アニメ風・漫画風のイラストは若い読者には強いアピールになりますが、大人読者には幼稚さを感じさせてしまうことも良いのです)
3)バトル・冒険展開よりはミステリー・サスペンス・日常的展開の方が好まれやすい
(もともと新書形式のノベルズには、ライトノベルに近い雰囲気のミステリー作品が多くあり、そこからの影響も大きいようです)
4)大きなつながりはありつつ各話毎が独立したエピソードになっている短編連作スタイルの作品が多い
(バトル、冒険展開にはあまり似合わないスタイルですが、ライト文芸には適しています)
とはいえ、ライト文芸はまだまだ若いジャンルです。これらの特徴は今後変化していく可能性があります。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。