
定義が定まらないのがライトノベル?
ライトノベル。ご存知ですよね。
「文庫の売り上げのうち二割を占める」と言われる、人気小説ジャンルです。
このサイトに来てくださる皆さんは、熱心なライトノベル読者も多いのではありませんか。
じゃあ、「ライトノベルを正確に定義してください」と言ったら、どうですか。困りませんか。
実際これ、すごく難しい問いかけなんです。色々な人が色々な定義を出していますが、まだはっきりと固まったものはありません。
たとえば、次のような定義が知られています。
・文庫サイズ
・アニメ漫画風のイラストがついている
・ライトノベル専門のレーベルから出ている
・ライトノベル専門の作家が書いている
・キャラクターが「立って」いる
・中学生や高校生向けに書かれている
これらはそれぞれ、ライトノベルっぽさを感じさせる重要な要素ですが、
全てのライトノベルに通じるとは限りません。
「なろう」系のウェブ小説が紙の本になるときは文庫より大きいサイズが普通ですし、
イラストも必ずしもついているとは限りません。
普段はラノベが出ないレーベル、ラノベを書かない作家さんがいかにもラノベっぽい作品を書くこともあります。

ライトノベルは娯楽のために!
そこで、榎本メソッドではライトノベルはこういう風に定義します。
・中学生~高校生を主なターゲットとし、キャッチーさを重視する娯楽小説
この中で一番大事なのは「娯楽小説」という要素です。
純文学のようなメッセージ性やテーマ性を重視するのではなく、
とにかく読者が笑い、泣き、喜び、感動し、興奮して、
読んでいる時間を楽しめれば、それでよい、というのが娯楽小説の考え方です
だからこそ「キャッチーさを重視する」という言葉も出てきます。
キャッチーさ(読者の心をつかむ力)があればこそ、楽しむこともできるわけですから。
また、娯楽小説にはターゲット読者も大事です。
「地球上に住む人すべてが楽しめる娯楽」は難しいです。好みがありますから。
そこで、ターゲットを絞り、「この立場の人はこんな好みがある」と考える必要があります。
長い間、ライトノベルでは中学生~高校生がターゲットとされてきました。
「主に」とぼかしてあるのは、最近ではもっと上の世代もライトノベルを読んでいることがわかってきたからです。
しかし一口にライトノベルと言っても、その中身は様々です。
あなたはどんな読者をメインターゲットに考えますか?
それ次第で、キャラクターも、文法も、変えていく余地があります。それがライトノベルです。
移り変わる流行り廃りを追いかけて、いま一番人気のジャンルで書くもよし。
あくまで自分の好きなものを追い求めていくのもよし。
マイナーだけど好きな人が確実にいるジャンルのものを書くのもよし。
娯楽のためなら、面白いなら、なんでもアリなのがライトノベルなのです。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ) オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。