創作基礎5:とりあえず書いてみましょう!

創作基礎

プロットなんていらない?

さて、「プロットを作ろう」「準備をしよう」という話を聞いてどう思いました?
「面倒くさいな」と思いませんでした?

じゃあ、そこをひっくり返しましょう。「プロット、作らなくてもいいですよ」と。
とりあえず、書けるところから書いてみてください。
なんでもいいから(というと語弊があるんですが)書いてみてください。
創作が苦手な人、不慣れな人にはおすすめのやり方なんです。

いま、頭の中にあるシーンがありますか? まずは、そこから書いてみましょう。
主人公とヒロイン、あるいはライバルのイメージはありますか? じゃあ、二人の出会いから書いてみましょう。

その次は、どんどん事件を起こしてみましょう。敵が襲ってきたり、トラブルがあったり。
事件が思いつかない? じゃあ、彼らの日常を書いてみましょう。その中で起きそうな事件、考えてみましょう。

こんなふうに「とりあえず書いて」みると、そこから見えてくるものがたくさんあります。
キャラクターがどんな性格をしているのか。彼らがどんな場所に暮らしているのか。
それでもどうにも話も膨らまなければ、そこまでです。
でも、たいていの場合、何かしら大きな事件にはつながっていくはずです。

そして、主人公が旅立ったり、ライバルに勝ったり、目的を果たしたりしたら、一段落。
それが文庫本にして数十ページなのか、100ページ前後なのか、200~300ページなのか。
ともあれ、あなたはとりあえず一つの作品をかきあげたことになります。それはとても素晴らしいことです。

もし、あなたの頭の中に壮大な冒険物語や宇宙を揺るがす陰謀の物語があるなら、
まずは主人公の身の回りで起きる異変や、彼の旅立ちから書くのをおすすめします。

「いやいや、まずは物語に深く関わる神話や、陰謀のルーツから書きたいんだ」ですか?
残念ながら、そんなふうに最初から大風呂敷を広げますと、たいてい途中で力尽きます。
まずは私を信じて、主人公周辺のことから書いてみてください。
結局はその方が、あなたの書きたい大きな事件にも自然とつながっていくのです。

そうして、とりあえず神話とのつながりや陰謀と対峙するところまで書いてみてください。
たいてい、そのあたりで物語としての一段落になる……はずです。例外もあるので、一口では言えないのですが。

こんなふうに「プロットを作らずに思いついたところから書く」のも、
創作の訓練や趣味の創作としては十分価値のあるものです。

プロット作らなくてもいい理由

「何を言っているんだ、言うことを変えるな」と思いましたか?
ごめんなさい、もうちょっとだけ話を聞いてください。

別項で話したとおり、プロットは良い作品を作るために重要です。プロを目指すなら必須です。
また別の項でこうも言いましたよね。「別にプロを目指さなくたっていいんじゃない」と。

楽しみのために書く、自分の中のもやもやしたイメージを吐き出したいために書く、であれば嫌なのに手間をかける必要はありません。
「なんとしてもいい作品を作るんだ!」でなければ、プロットなんて考えなくてもいいのです。

これ、色々な専門学校やカルチャースクールなどで作家志望者の皆さんと触れ合ってきた経験からなんですが、
作家志望者って完璧主義者が多いようなんです。それも、あまりよくないタイプの。

よい完璧主義者は、よいものを作るために努力を惜しまない人です。けっして途中で諦めません。
よくない完璧主義者は、完璧なものを作ろうとしてエネルギーを使い果たし、力尽きて結局未完成の作品だけ残る人です。
プロットで力を使い果たしちゃう人、結構いるんです。だったら、そのまま書いたほうがいいです。

あるいは、「きちんとしたプロットを作るのは慣れてから」という考え方もできます。
一度作品を完成させると、最初にどんな情報が決まっていると役立つのか、何となく分かるようになります。
それからきっちりとしたプロットを作るようになっても、遅くはないですよね。

ただ、一点だけ。
ガッチリしたプロットは作らなくてもいいですが、その時点で思いついていることは、
あくまでメモ程度でいいからちゃんと書くようにしてください。
人間は忘れる生き物だからです。それだけは、お忘れなく。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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