
新人賞の手順って?
プロ作家になるための王道である新人賞は、どんな手順で行われるのでしょうか。
以下、簡単に見てみましょう。
まず、応募の仕方自体は様々です。
昔は作品を原稿用紙に書いて郵送(のちにプリントアウトに)一択でしたが、今は随分変わりました。
プリントアウトで受け付けている賞は今でも多いのですが、他にも
CDやUSBメモリなどの媒体に記録したデータで受けつけてくれるところあり、
メール添付や専用フォームから投稿する形でオーケーなところあり。
さらに近年では「小説家になろう」や「カクヨム」など
ウェブ小説サイトへの投稿が新人賞応募に直結するスタイルなどもずいぶん増えてきました。
形はともあれ、きちんと投稿することさえできたなら、そこから先は運を天に任せるしかなくなります。
でも、たいていの新人賞では選考が進むごとに発表がありますから、それをドキドキワクワクしながら待つことになるでしょう。
そう、選考には段階があるのです。
一次選考は主にライターや新人作家、評論家やフリー編集者など、「下読み」と呼ばれる人たちが読みます。
二次選考あたりから編集者が参加し、さらに作品がふるい分けられていきます。
投稿数の多い賞だとこの後も三次、四次と選考が続きます。
最終選考では、有名作家などの選考委員も参加してきて、ようやく各賞が選定されます。

受賞し、デビューするために!
では、どうしたら受賞とデビューにこぎつけることができるのでしょうか。
以下のような関門があなたの前に立ちふさがります。
1:レギュレーション通りにちゃんと投稿できるか?
2:梗概(あらすじ)は適切に書けているか?
3:選考の各段階に相応しい作品に仕上がっているか?
1つ1つ見ていきましょう。
まずは「1」。新人賞にはいくつもの決まりごと(レギュレーション)があります。
これは新人賞を適切に運用し、あなたの作品の質を見極めるために必要なものなので、しっかり守りましょう。
ありがちなのは以下のような形です
・送る形(形式やページ数)を守る
・個人情報の明記
・締め切りを守る
・余計なものを添付しない
・盗作をしない
詳しくは、各新人賞のサイトを参照してください。
色々細々ありますので、ある賞ではいいことが他の章ではダメ、というのも珍しくありません。ご注意を
「2」ですが、ほとんどの新人賞では梗概といって、作品のあらすじを数百文字で書いてつけることになっています。
どうしてかといえば、読む人が作品の全体像を把握しながら読むことができるように、です。
「このあらすじからすると、あのイベントがそろそろ来るはずだな」
「あれ、あの設定をそろそろ提示しないと話がわからなくならないかな」
と考えながら読むことで、作品としての評価がしやすくなるわけです。
ですから、このあらすじは物語の始まりから終わりまでを淡々と書くことが必要です。
「そして物語は感動のクライマックスを迎える!」のようなぼやかし、あおりはいれてはいけません。
うまく書けない人は一度、物語の中で起きることを箇条書きにしてみるといいでしょう。
そして最後に「3」です。
新人賞の各選考は、段階ごとに見るところが違います。
一次では「作品としてきちんと仕上がっているか?」が重視されます。
「基本的な文章ルールが守れている」
「大きな矛盾がない」
「きちんと完結している」
「キャラクターに共感できる」
「賞の求める方向性とある程度合致している」
などですね。
ただ最近ではこれに加えて、
「なにか一つ目を引く特徴があること」
も求められているようです。新人賞全体のレベルが上っているのです。
二次では「読んでいてストレスを感じない、スムーズに読める」ことが重視されるようです。
つまり、作品として多くの読者に求められる水準か、というわけです。
もちろん、作品に魅力をもたせる特徴についても厳しく見られます。
最終選考の段階では、「作家性」があるかどうかが問われます。
これは「他の新人賞投稿作品はもちろん、既存のプロと並んでも一歩前に出られる強力な個性」があるかどうか、ということです。
非常に厳しい言葉が連なってしまったので、気持ちが折れてしまった人もいるでしょうか?
しかしここはむしろ気持ちを盛り上げて、「やってやる!」という心になってほしいのです。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。