2018年10月:「映像作品に学ぶ」

2018年度

時代劇は偉大です!

今回のテーマドラマを見て、そこから物語づくりを考えようです。

特に長いこと続くのがごく普通だったころのドラマというものは、ベタで、王道で、ある程度のパターンができています。それを手を変え品を変え新しい物語に仕立て上げていくわけですから、ベタな話をどう味付けするかという工夫がたくさんあるのだそうです。
またメインターゲットの年齢層が高めで、そういった人たちが複雑な話を好まない、ということもあってストレートに面白い、と。

一作品目には、そういうわけで「三匹が斬る!」が題材に選ばれました。

温かい人柄ながら冷静沈着で決断力のある「殿様」
どこかの大藩に千石で仕えたい、という野望を持った九州男児「千石」
調子の良さを武器に各地でテキ屋商売に勤しむ「たこ」
三人の素浪人を主役に据えた時代劇シリーズです。

主役の三人が別々の目的をもって別々に行動をしているのがこのお話の特徴です。三人は各々の旅の途中、たまたま同じ町に現れて、別々の理由で同じ事件に関わっていきます。
この群像劇的な造りが皆さんの創作の助けになるだろう、と選ばれました。

視聴してもらったのは第二シリーズの第三話。
この三話はハッピーエンドとは言えません。
苦しめられていた者を助けることはできず、その弔いとして悪人を倒す。そんな復讐劇のようなお話です。

権力者がその立場にがんじがらめにされて、より上の立場の人間に苦しめられている、というお話なのですが、
この手のドラマでハッピーエンドを迎えるのは、結構な場合水戸黄門や暴れん坊将軍のような権力者なのだそうです。
このお話に登場する三人はそういうキャラクターではない、ということで万事まるっと解決とはいかなかったのですね。

その代わり、このお話には視聴者の怒りを誘う工夫が施されています。
悪役キャラクターである丹阿弥です。この丹阿弥はとにかく腹の立つ悪役として立ち回ります。
視聴者は丹阿弥に腹を立てて、主役の三人と同じように彼の所業に怒り「こいつをぼこぼこにしてしまえ!」と三人を応援するのですね。

どうやって気持ちよく悪人を倒すのかというお話は、皆さんが物語を作るときにも(作品の方向性にもよるでしょうけれど)考えたいですね。

自衛隊+マスコミ

二作目は「空飛ぶ広報室」
有川浩さんの小説を原作とした職業もののドラマです。
テレビ局のディレクターと自衛隊の広報室、二つの職業を題材にしたお話が展開されます。
今回は、そのなかの三話を見てもらいました。

自衛隊という仕事は、内容が特殊な分特別な事情を抱えることにもなります。その特別な事情からどんな物語が作れるだろう、というところがポイントだと講師は話しました。
また半分がテレビ業界のお話、ということで、この二つの仕事を組み合わせたときに、その関係性からどんな物語を作っていくことができるだろうか、というのも感じ取ってほしいところだそうです。

ドラマの視聴が終わったところで、参加者の皆さんに作品についての意見をもらいました。
今回は「空飛ぶ広報室」について集まったものからいくつか紹介させていただきます。

○Aさんの意見
前半はそんなに好きでなかった。
空幕(航空幕僚監部。防衛省の、航空自衛隊に関する機関です)の仕事とディレクターの仕事についてをメインで話していて、日常のお話が多かったため。
しかし後半は面白い。人間らしい感情、いざこざみたいなものがある。

この意見に対して講師は、いいところに目を付けたと話しました。
今回見てもらった話では中盤から終盤にかけて大きなドラマが動き出すのです。

職業ものを書くときは、どうしても前半のような造りになってしまうそうです。けれど大きなドラマがないと視聴者の興味は引けません。
この三話では前半で仕事の話を描き、後半に大きなドラマを固めてあります。
(実はこの前半にも男性主人公の過去にまつわる大きなドラマがあるのですが、今回見てもらったのは三話だけですので、それは感じ取りづらかったでしょう)
やはり大きなドラマは欲しいものですよね。

○Bさんの意見
途中から恋愛の話をしだしたために「今までの話と違う」「期待を裏切られた」と感じた。

実は、この回は恋愛の話なのです。
自衛隊の生活の話を描く中で、恋愛をピックアップしたんですね。

講師は、恋愛が好きな人は多い、と語ります。
それが恋愛の話だと分かると「しーん」と貝を閉じてしまう人はいるし、今回は「生活の話と見せかけて恋愛の話」と見えてしまう人もいるだろうけれど、
これは多くの人にとって興味を引くテーマであるし、一か所に男女を詰めこんで恋愛が全くないという方が不自然だというのです。
たしかに、そう言葉として聞いてみると不自然そうだと思えます。

またこのお話は「自衛隊員を別世界の存在として見るのではなくではなく普通の人として見てほしい。人を殺したり死んだりする職業、というイメージに対して普通の人なんだと見せるための恋愛話」なのだと講師は言いました。だからこそ、三話という早い段階で描かれたのだそうです。

映像作品……こういう機会でもないと、なかなか自分から、それも勉強のために見ようとは思えないものですよね。
それに、いろいろな人の話や講師の説明を聞くと「こんな考え方があるのか」「なるほどそういうところには気づかなかった」という発見があります。

土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。

※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。

【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。

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