「考える」事が大事です!
この回に行った演習は一つ一つステップアップする形でプロットを作るやり方でした。その内容を紹介する前に、ちょっと前置きをさせてください。
エンターテイメントを作る、というのは大まかに考えると、
・考える
・作る(書く・描く)
に分けられる、と講師は言います。
そのうち小説で文章を書く、漫画でネームを切る、またペン入れをする、のように作品の形で出力する「作る」は、今回の主題ではありません。
今回扱われたのは「考える」ことです。
……考える。これもまた、二つに分けられるそうで、
その二つというのが、
「インプット」と「アウトプット」とのこと。
この場合のインプットは、調べること、情報を取りこんで物語を作るための素材を蓄えること。
そしてアウトプットは、この蓄えたものを自分なりの形にして送り出すことです。
今回の「考える」はアウトプットのことを指します。
このアウトプットの力を高めるには、もちろん技術を覚えることも大事ですが、数をこなすことも大事。
どんどん数をこなしていったほうが、お話づくりの実力は上がる――のですが、
じゃあそんなに数をこなすことができるかというと、それがちょっと難しいです。
例えば週に一個、お話の始まりから終わりまでをおおまかなあらすじにまとめよう、
なんて考えてみると、ああこれはたしかに息が続かないぞ、と思わされます。
そこで授業では、いろいろなやり方でお話を作ってもらっています。
作り方を変えて、それぞれの考え方に沿ってお話を作ることで経験値をためていくわけですね。
そのひとつが今回紹介された「ステップアップ式」なのです。
ステップアップ式って?
これは榎本事務所オリジナルの創作法でして、
榎本秋『テンプレート式 ライトノベルのつくり方』(総合科学出版)
という本で紹介しています。
具体的なやり方ですが、物語に入れてみたいキーワードをとにかく用意して並べ、
そこから使えそうなものをストーリー、キャラクター、世界観それぞれに割り振ってみる。
そうやってぼんやり輪郭の見えてきた設定それぞれをつなぐようなキーワードを考えて、ひとつのお話としてまとめていく。
――と、こんな感じの工程を踏んで、参加者にはお話を作ってもらいました。
テーマは「ドタバタ日常」です。
さて、皆さんドタバタ日常というテーマもあって、日常世界に特別な出来事が起こるという話を考えてくれました。
それではどんなお話が出来上がったか、いくつか紹介させていただきましょう。
〇Aさん
多くの人が魔法であったり、特別な出来事であったりを考えてくれるなか、
この人が用意した不思議は「バカたち」でした。
エネルギーを持て余したバカたちが大暴れすることで、ドタバタ騒ぎが起こるわけですね。
ただ、これはキャラクターの差別化が難しい、と講師は言います。
みんなバカですからね。
この話の後半では生徒会長がバカたちの騒ぎに首を突っ込むのですが、
例えばこの生徒会長を早い段階で投入する、などの工夫があるといい、とのことです。
〇Bさん
誰かの望みをかなえて魂を取ることで出世する悪魔が、
よりにもよってぬらりひょん(妖怪なので死なない)を相手にしてしまった、というお話です。
このままでは仕事を終えられない、さてどうしよう、と。
面白い、と講師にも褒められたアイデアです。
ただし、この「どうしよう」から先が「どうやって問題を解決するか」ではなく世界を救う展開になってしまいました。
先の展開が思いつかなかったようです。
講師曰く「インプットが足りない」とのこと。
なるほど、そういうこともあるのか……と思わされる作品でした。
いかがでしょうか。
物語を、あまりたくさんは書いていないなあ、という人。
最近お話が思いつかないなあ、という人。
こんな感じでちょっとアプローチの仕方を変えてみるのは、ありかもしれませんよ。
土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。
※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。
【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。