2018年1月:「意外と知らない中世ヨーロッパのこと」

2017年度

知らない話はいろいろあるもの

物語の一大ジャンルといえる「中世ヨーロッパ風ファンタジー」。

実際に皆さんが書くかどうかはさておいて、
それら「中世ヨーロッパファンタジー」のネタ元となった中世ヨーロッパについてちょっと知っておこう、というのが今回の主題です。

・ローマ帝国の話

「中世」の話をするならローマ帝国が欠かせない、という話から講義は始まりました。

5世紀の西ローマ帝国滅亡から、
15世紀の東ローマ帝国滅亡までの10世紀、
この10世紀が「中世ヨーロッパ」といわれております。

この西ローマ帝国、東ローマ帝国はその名前の通り、
古代のローマ帝国が西と東に分かれたものです。
このローマ帝国が古いファンタジー作品に登場する「古代の偉大な帝国」という設定に大きな影響を与えているのだろうと講師は話します。

この「古代の偉大な帝国」というのは、
今現在主人公たちが冒険しているこの世界の、何百年何千年前には偉大な帝国があり、その遺物・遺産があり……
という設定のことです。

歴史がそうだったために、自然と創作の世界にもそういうものが現れたのではないか、というのです。
実際、ローマ帝国はすごい国でした。
なにがすごいかといえば、インフラがすごい。

ローマはインフラ整備をがっつりやったといいます。
例えば上下水道や、馬車の通れる街道がそうです。
ローマ帝国が滅びてからは、ローマ街道も馬車が通れるような道でなくなり、上下水道も失われてしまいました。

・キリスト教の話

ゲルマン民族の大移動と、次いで起こった西ローマ帝国の崩壊とともに、暗黒時代がやってきます。
実際は「暗黒」といっていいかどうかは怪しく建築など独自の文化も発展したと言いますが、
それでも文化レベルは下がってしまいました。
中世ヨーロッパ人もそこまで不潔ではなかったのですが、風呂好きローマ人の清潔さには負けます。
下水道も失われてしまったので、どうしても病が起こります。

そうした厳しい期間を経て、やがて安定した環境が構築されていきます。
強い人が戦いを行っていた時代から、より強い人が戦いを収める時代に変わっていくわけですね。
すると人の上に立った人は、みんないい顔をしたがるわけです。
そういう時に使われるのは、例えば「ローマ帝国を継ぐ」という主張であったり、キリスト教・カトリックの権威であったりするとのこと。

当時、キリスト教の影響力はすごいものだったんですね。
カトリックから破門されることは社会的な地位を失うようなものでした。
実際、教皇と喧嘩をした王が破門されて、王の地位を失ったり、国が危機に陥ったりといったことがあったそうです。

講師曰く、中世ヨーロッパ風ファンタジーを作ろうとなると、どうしてもキリスト教的なものが出てくる。
それだけキリスト教は中世ヨーロッパに根づいていました。
ではこの「キリスト教的なもの」を「キリスト教」として扱わないなら、そのポジションに収まるのはなにか、というのが考えどころなのでしょう。

・騎士の話

中世ヨーロッパ風ファンタジーに出てくるような騎士団は存在しない。
そんなお話から、騎士団についての講義が始まりました。

騎士団自体は存在するものの、それはずいぶんとイメージの違うものだそうです。
それは、例えばいざというときに騎士たちが集まって協力する、という緩やかな繋がりであったり、
物語の中の騎士団を真似たごっこ遊び的なサークル活動であったり、
修道士やの修行として形成される宗教騎士団であったりします。

このなかで物語の中の騎士団に一番近いのは宗教騎士団だそうですが、
物語の中の騎士団には宗教が絡まない場合も多い、ということで、やっぱり違うものなんですね。

講師はそこから十字軍のこと、その熱が長続きしなかったことや、ひどくグダグダな結果になった時のこと、また彼らの功績についても触れました。

・森

現代と中世ヨーロッパとの大きな違いとして挙げられたもののひとつが森です。
森が町のすぐ近くにあり、時には森の中に町がある、という感覚や、
農耕技術の発達とともに森が拓かれて、その感覚が変わっていくことなどが話されました。

そんな中世ヨーロッパも印刷技術、羅針盤、火薬の到来によって変わっていって……。
ルネサンスや宗教改革、大航海時代、火薬によってヨーロッパの中世が終わったところで、講師の話も終わりました。

最後に、いちばん大事な話

授業の趣旨は、決して「中世ヨーロッパにジャガイモやトマトはない!」のように「ここが史実と違う」という点に注意しなさい、というものではありませんでした。
ただ後々ネタに使えるように、知識をため込んでおこう、というものでした。
知らないで書くよりは、知っていてあえて書いたほうがいいですものね。

土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。

※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。

【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。

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