2017年12月:「映像作品から学ぶ」

2017年度

ベタを大事にしよう!

この日の演習は、いつもとちょっと雰囲気が違いました。
参加者の皆さんにテレビドラマを見てもらったのです。

今回の意図のひとつとして「ベタ(王道)なものを見てもらうこと」がありました。
一読者・一視聴者であればベタなものを避けても問題ないですが、やっぱり作り手となるとそうもいかなくなるわけです。
なにせベタなものというのは人に好かれて受け入れられてそうなったものですし、
ベタというくらいによく馴染みがあるものです。

そういうわけで、ベタなのです。
参加者の方々にはベタなテレビドラマを見てもらい、その物語の構成を基にオリジナルのお話を考えてもらいました。

見てもらったのは股旅もの・勧善懲悪ものの王道「水戸黄門」です。
水戸黄門にも各シリーズのクライマックスになる大きなスケールの話や、変化球の話はあるのですが、
それでは今回の場合意味がありません。
そこで、道中の特別でない一話として第31部「うまい鯛にゃ裏がある」が選ばれました。

物語の構成は、
1.人助けの動機を持つ一行が、旅先で困っている人に出会う。
2.調べてみると事件の裏には陰謀や不正がある。
3.黒幕を倒して問題を解決する。
といった感じです。

ここでお話を作ってもらうにあたって気をつけなければいけないのは「キャラクターの動機」です。
黄門様が人助けをするのはお人好しだからでしょう。
またその好々爺というべき人柄が人の情に働きかけることで物語が動く、ということも珍しくありません。

ですがそれはあくまで黄門様のキャラクターであって、皆さんのお話のキャラクターではないのですから、そこは注意しなければならないのです。

ドラ息子から秘密のヒーローまで

では実際にできたお話を紹介いたします。

A:
黄門様ポジションに納まっているのは金持ちの息子です。彼が道楽として旅をしている、というのが大まかな設定。
そんな主人公が人を助けるのは「惚れるから」。
旅先の女性を好きになって、彼女の力になるわけです。

つまり、主人公はどうしようもない男です。
講師曰く、こういうキャラクターに大切なのは「憎めない感じ」とのこと。

寅さんや釣りバカ日誌の登場人物たちはどうしようもない部分も目立つ人たちですが、この「憎めない感じ」があります。
そこは俳優の力でもあるのですが、キャラの力でもあります。
それと同じく、この作品の主人公も「愛すべきダメな人」であるといい、というのです。

例えば誰かのために身を削って頑張る、なんていうキャラクターは好きになれそうです。

B:
主人公は世界的に有名な騎士です。彼は強く、また正義感の塊のような人です。
貧富の差が激しい国へ行った彼は、そこが不平等な国だと感じます。そして王が悪いやつだとわかると、物理的に誅するのです。
この辺主人公のキャラクターがはっきりしていて、講師も称賛していました。

そんな主人公ですが、特に正体を隠すことはなく、素顔を晒して行動しています。
しかし、素顔で旅をするなら正体が気づかれない工夫がほしいところ……ということで、講師が例として出した解決策は「間違った人相(顔に限らず見た目などでも)が伝わっている」でした。
それと見た目がかけ離れているために、誰もが主人公の正体が「かの有名な騎士だ」と気づかないわけですね。

C:
主人公はゲームの達人。宝くじに当たった彼は「全国区のゲームセンターを回ろう」と旅立ちます。そして、ゲームセンターで起こるトラブルをゲームの力で解決していくのです。
このおバカな感じ、面白いですよね。

一方で問題として挙げられたのは「舞台の狭さ」です。ゲームセンターのなかで物語を完結させるばかりでは、お話が広がりません。そこで、ゲームセンター以外の因縁を引っ張りこんでくる、などの工夫が必要になります。

また講師は「ドラマと小説の違い」にも言及しました。
小説にするならば主人公の悩みや葛藤がほしいとのこと。
そしてそのためにはいくらかシリアスな設定があったほうがいい、と。
例えば「俺たちがゲームで稼いだ金はなんだったのか、と感じてしまう」あるいはもっと大きく変えて「命を懸けた闇のゲームに勝利して、大金を得たと同時に燃え尽きてしまった」なんて設定があると小説的な面白さが生まれてくる、ということでした。

それにしても、同じベタな構成を使っていても、やっぱりお話というのは作り手によって変わってくるものなんですね。
パターンとオリジナリティをうまく融合させる、というのは小説クリエイトコースでも大事にされているものです。
それを、こうして実際に作品として見てみると「なるほどベタって大事だ」と感じさせられますね。

土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。

※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。

【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。

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