
メリハリがないとつまらない
物語をつくるなら、それがメリハリのあるお話になるかは気にしたいものです。
例えば刑事もののミステリーで、
主人公が淡々と調べて調べて調べて調べて……とそれだけで事件の真相に辿りついてしまうのは面白くありません。
そこで主人公に危険が迫ったり、主人公の推理が間違っていたりといった「先の展開を読めなくするピンチ」を考える、というのが今回の主題だったわけです。
講師のお話によると、ピンチを作る際のポイントは3つあるそうです。それを紹介しましょう。
〇ピンチのハードルの高さ
主人公の周りでなにか問題が起きたとして、それがあっさり解決できるものではピンチになりません。
でも「ピンチは主人公が乗り越えられなければ意味がない」と考えてしまう人もいますよね。
そういう人は「主人公が乗り越えられるピンチ」を考えるのではなく「このピンチを主人公が乗り越える方法」を探すのがいいそうです。
これ、結構大変そうです。
でもこれくらいできなければ、小説家になるのは難しい、ということなんでしょうね。
まずは簡単に乗り越えられることができないようなピンチを用意して、それからそのピンチを打破する方法を考える。
これが大事なんですね。
〇ピンチのパターン
ピンチにもいくつかのパターンがあるそうです。
・強大な敵
主人公より強い敵が現れる、というのは分かりやすいピンチです。
・重大な障害
主人公が強いときに、なにかしら足を引っ張る要素を用意するのも手です。
・予想外のアクシデント
対策を用意していない問題が起きて、主人公を追い詰めます。
今回紹介されたのはこの3つでした。
ヒーローがピンチだ! ……どんなとき?
また、参加者の皆さんには「ヒーローをピンチに追い込む方法」について考えてもらいました。
出てきた意見はこんな感じです。
・社会的に追い詰める(ヒーロー事件の容疑者にされる、等)。
・家族を狙う。人質をとる。
・仲間と引き離す。
今回は、ヒーローよりも強い敵を出す、というよりはヒーローが力を発揮できない状況をつくる、という類の意見が多かったです。
〇ご都合主義にならない工夫
ピンチに陥った主人公が、突然の幸運に助けられる、というのは避けたいものです。
主人公を追い詰めたプロの殺し屋が、急に戦いをやめて去ってしまったり。
お金があれば解決する問題に悩んでいたら、大金が手に入ってしまったり。そんな展開は、ちょっと拍子抜けです。
やっぱり、ピンチを切り抜けるのは主人公の力や、知恵や、技術であってほしいものです。
でも、そういう予想外の展開を描きたい、という時だってあります。
そういう時に使えるのがサブキャラクターの視点、だそうです
先の例えにしても、
殺し屋の視点で戦いに臨む経緯を描くことで、どうして急に戦いをやめたのか伝えることもできますし。
お金が主人公の手に渡る過程が他のキャラクターの視点で描かれれば、読者も納得できるかもしれません。
ご都合主義には見えなくなりますね。
ピンチで物語をどう盛り上げるか、小説だけでなくお話の作り方を知りたい人には大いに参考になると思います。
土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。
※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。
【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。