組み合わせの妙
今回は、参加者の皆さんに魅力的なキャラクターの組み合わせを考えてもらいました。
キャラクターがひとりいるだけでは物語はなかなか成り立たない、多くは他のキャラクターがいて初めてお話が動く、ということで、
面白い作品をつくるための、効果的な組み合わせをお話ししてもらえました。
なんでも、キャラクターが似た者同士だと、お話を進めにくくなってしまうとのことで。
立場や性格が、ちょうどキャラクター同士を対立させられるようなものになっているといいそうです。
真面目と不真面目、不良と委員長、軍人と普通の高校生、といった具合ですね。
反対の要素を意識する、が基本みたいです。
さて、肝心の演習ですが、
今回は二つのお題に取り組んでもらいました。
一つ目は学園を舞台にした青春恋愛ものの主人公とヒロイン、そして簡単なあらすじを考えてもらう、というもの。
二つ目はお仕事もので、仕事に就いて数年の主人公と、その相棒/もしくはライバル/宿敵、そして彼らのお話を考えてもらう、というものでした。
皆さん、集中してお題に取り組んでいました。
ただ、良いキャラクターを作るには、要素や個性をたくさん盛り込めばいい、というものではありません。
「ちょっと凝りすぎですね」と講師からアドバイスをもらった人もいました。
もう少し気楽に、講師から聞いたことを試してみる、くらいの気持ちでもいいかもしれません。
重要なのは、物語づくりのコツを実感することですからね。
対立の面白さ
最後に、講師による講評がありました。
反対の要素を持つキャラクターの組み合わせ、については、皆さんよくできていたとのこと。
しかし対立する、という点で考えるともう一要素ほしい、というものが多かったようです。
例えば、一つ目のお題の答えとして、
「お調子者の問題児と厳格なクラス委員」という組み合わせを考えた方がいました。
講師曰く、この二人が対立するにあたっては、彼らが分かりあえるポイントが必要なんだそうです。
たしかに、主人公が問題を起こす理由がヒロインの理解できるものであったりすると、二人が分かりあったりできそうです。
一方で、二人のキャラクターが対立する原因が、必ずしも性格の不一致でなくてはいけない、というわけではないようです。
参加者のなかに「主人公は暴れん坊、ヒロインは冷血」という関係性を作ってくれた人がいました。
これは対立・対比というとちょっと違うかも……と講師はおっしゃったのですが、
二人に設定された「競争心が強すぎるという共通点」はすごくいいね、とも付け加えられました。
競争心が強い二人なら、自然とお互いにぶつかり合って、それだけ物語が進んでいくからだそうです。
二つ目のお題の回答で面白いものには、「霊退治の能力者とその同業者」をあげてくれた人がいました。
主人公は「依頼主を見て報酬を決める」、ライバルは「搾り取れるだけ搾り取る」というところに対比があります。
キャラクターの個性が生きる上手い設定なのですが、このパターンでもっといい対比もありますよね、ということで、
講師は「ひねくれているが患者を生かそうとするブラックジャックと、安楽死を勧めるドクターキリコ」を例として挙げておられました。
授業ではこんな風に参考になる作品の名前がたくさん挙げられ、勉強になります。
こういったことは教えてもらえないとなかなか分からないものです。
土曜セミナーは一般の方、卒業生の方、他コースの学生さん方のためにもなるように開かれていますので、興味のある方はぜひご参加ください。
※本レポートは、専門学校日本マンガ芸術学院における「土曜セミナー」の様子です。講義・演習は榎本秋のプロデュースのもと、講師:榎本海月が行ないました。
【執筆者紹介】榎本事務所(えのもとじむしょ)
作家事務所。大阪アミューズメントメディア専門学校、東放学園映画専門学校、愛知県の専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院仙台校などの専門学校やカルチャースクールなどへの講師派遣、ハウトゥー本の制作を行い、小説の書き方やイラスト・マンガの描き方といった創作指導に力を入れている。